日本政策金融公庫の融資を受ける場合に、団信加入はどうする?
日本政策金融公庫から融資を受ける際に、団体信用生命保険(以下「団信」と呼びます)に加入するか、しないかの判断を求められます。
この団信は、加入すべきものなのでしょうか?
一緒に考えてみましょう。
目次
1.団信(団体信用生命保険)とは?
団信というのは、お金を借りた人が死亡や高度障害などにより、借金の返済ができない状態になった場合に、借金の残債をすべて肩代わりしてくれる生命保険のことです。
マイホームを購入するときにローンを組む場合にも、団体信用生命保険に加入します。
日本政策金融公庫の団信は、その事業融資向けのものとなります。
事業主に万が一のことがあっても、家族や従業員に迷惑をかけることがなくなります。
日本政策金融公庫の融資を受ける方が加入できるのですが、年齢制限があり、満15歳以上満68歳未満の方が対象となっています。
そして、現在、通院中であったり病歴があっても、加入できる場合もあります。
2.団信に加入しているのに、返済が続くこともある?
団信は契約者、つまり事業主に死亡や高度障害等になれば、同時に権利が発生します。
権利は発生しているのですが、そのまま返済をしてしまっている方が多いようです。
本当は返す必要がない借金を公庫に返済していたとしたら、そのお金はどうなるのでしょうか。
もともと返済する必要のなかったものですから、手続きをすれば、全額返却してもらうことができます。
日本政策金融公庫は、契約者がその事由に該当していたことに気付いていない可能性があります。
その場合は、ご家族から日本政策金融公庫に問い合わせをするようにしましょう。
3.団信の保険料はどれぐらい?
団信に加入した場合の保険料は、1年に1度、返済口座から引き落とされます。
そして、掛け捨てであり、途中解約することができません。
団信の保険料は、借入金額、返済期間、据置期間などによって、金額が異なります。
500万円と1,000万円の借入で試算してみます。
(1)500万円を元金均等返済方式で借りた場合
①5年間、据置期間3カ月
年目 特約料(円)
1 12,920
2 10,080
3 7,160
4 4,250
5 1,340
合計 35,750
②7年間、据置期間3カ月
年目 特約料(円)
1 13,200
2 11,210
3 9,150
4 7,100
5 5,050
6 2,990
7 940
合計 49,640
(2)1,000万円を元金均等返済方式で借りた場合
①5年間、据置期間3カ月
年目 特約料(円)
1 13,200
2 11,210
3 9,150
4 7,100
5 5,050
6 2,990
7 940
合計 49,640
②7年間、据置期間3カ月
年目 特約料(円)
1 26,410
2 22,420
3 18,310
4 14,200
5 10,100
6 5,990
7 1,880
合計 99,310
このように、借入金額が大きくなるほど、返済期間が長くなるほど、保険料の総額が大きくなることが分かります。
7年返済で借入金額の1%ほどになります。
また、この団信の保険料は、年末調整や確定申告の「生命保険料控除」の対象とはならないので、間違えないように注意しましょう。
またこの保険料は、法人の場合は損金に算入できるのですが、個人事業主の場合は、必要経費とは認められません。
債務の弁済を受けたき、法人の場合は、収益となり、法人税の対象になるのですが、個人事業主の場合は、収益にはなりません。
4.団信の加入は任意
団信の加入は、義務ではなく、任意です。
日本政策金融公庫のWEBサイトにも「任意で加入できる保険です」と明記されています。
すでに、一般の手厚い保険に加入している場合は、加入しないという判断もできます。 日本政策金融公庫から融資を受けて、団信に加入する方の割合は45%程度です。
意外と低いと思いませんか。
融資金額が少なかったり、民間の保険に加入しているといった理由で加入しない方もいます。
融資を申し込む際には、少しでも金利を低くしようと努力しています。
保険料の負担は、期間が長いので、そんなに重くないように感じますが、総額では結構な金額になります。
保険としてメリットとデメリットを検討して加入するかどうか判断しましょう。
団信に加入しないと融資を受けられないという噂がありますが、全くの嘘です。
そもそも融資が決定した後に、団信に加入するかどうかの案内があるわけですから、融資に影響することはありません。
会社で借りているお金であれば、代表者に万が一のことがあっても、無保証の場合は、借金の返済義務は相続されません。
ただ、会社が存続できるかどうかという問題はあります。
代表者に何かあれば、売上の減少や取引先との関係も変わることが予想され、資金繰りが行き詰まって来る可能性があります。
さらに、借入が残ったままであれば、会社の存続はさらに厳しくなります。
会社を清算するにしても、継続するにしても、ご遺族に十分な資金的余裕があれば、団信は必要ないことになります。
会社を継続するのであれば、団信に入っておき、借入がなくなれば、当面継続することができます。
個人事業主で、個人で借入をしているのであれば、借金は相続されてしまいます。
遺族は、相続放棄をすることもできますが、相続放棄は3カ月以内にしなければなりませんから、そういったこともふまえて団信に加入するかどうかを判断します。
まとめ
日本政策金融公庫の融資計画の際には、団信加入の有無を聞かれます。
融資に影響するものではありませんから、総合的に判断して加入の有無を決めましょう。