人材開発支援助成金(旧:キャリア形成助成金)とは?
厚生労働省の人材開発支援助成金をご存じでしょうか。
以前、キャリア形成助成金と呼ばれていたものですが、助成メニューが整理統合され、人材開発支援助成金となりました。
ぜひ、活用したい制度ですので、概要をご紹介していきます。
目次
1.人材開発支援助成金とは?
厚生労働省が事業主の方のための人材開発支援助成金として設けられています。
制度は細かく見直しがかけられていますので、令和元年8月21日からの改正内容をふまえながらご紹介していきます。
この制度は、雇用する労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるための職業訓練等を受講させる事業主等に対して助成する制度です。
キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換することを目的としていましたが、人材開発支援助成金は、雇用している従業員の人材育成を支援することが主な目的となっています。
そのため、対象者は雇用保険に加入している被保険者となっています。
対象となる従業員も幅広く、例えば、育児休暇中の通信教育も対象となっています。
2.助成メニューの4類型
人材開発支援助成金には4類型があります。
(1)特定訓練コース
・職業能力開発促進センター等が実施する在職者訓練(高度職業訓練)、事業分野別指針に定められた事項に関する訓練 、
専門実践教育訓練または特定一般訓練、生産性向上人材育成支援センターが実施する訓練等
・採用5年以内で、 35 歳未満の若年労働者への訓練
・熟練技能者の指導力強化、技能承継のための訓練、認定職業訓練
・海外関連業務に従事する人材育成のための訓練
・厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練
・直近2年間に継続して正規雇用の経験のない中高年齢新規雇用者等( 45 歳以上)を対象とした OJT 付き訓練
(2)一般訓練コース
・その他の訓練コース以外の訓練に対して助成
Eラーニングを活用して行う教育訓練(一般教育訓練給付指定講座に限る)も、平成31年度から助成対象となりました。
(3)教育訓練休暇付与コース
・有給教育訓練休暇等制度を導入し、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成
・120日以上の長期教育訓練休暇制度を導入し、労働者が当該休暇を取得し、訓練を受けた場合に助成
(4)特別育成訓練コース
有期契約労働者等の人材育成に取り組んだ場合に助成されます。
・一般職業訓練
・有期実習型訓練
・中小企業等担い手育成訓練
3.助成対象となる訓練等
助成対象となる職業訓練、職業能力検定等、非常に細かく定められています。
事業内訓練では、部外講師、もしくは要件を満たした部内講師が行う訓練です。
必要名要件が技能検定1級に合格していたり、10年以上の実務経験といったものがあります。
事業外訓練では、認定を受けている施設や、大学、自動車学校等の各種学校等が定められています。
その他、職業能力検定や、キャリアコンサルタントの実施するキャリアコンサルティングが対象となっています。
4.支給額と支給対象となる経費等
この助成制度では、経費、賃金が助成金の支給対象となっています。
それぞれのコースや企業の規模によって細かく規定されています。
経費としては、事業内訓練では部外の講師への謝礼・手当・旅費、施設・設備の借上費、教科書等の購入・作成費まで対象となっています。
また、海外の大学、大学院、教育訓練施設等での訓練の場合は、住居費、宿泊費、交通費等も対象です。
訓練中は賃金が支払われることが前提となっていますので、賃金が補助されます。
例えば特定訓練コースでは1人1時間あたり、OJJ-JT、中小企業で760円です。
生産性要件を満たす場合は、960円に割増されます。
(中小企業以外はそれぞれ、380円、480円です。)
経費については、特定訓練コースで中小企業の場合45%、生産性要件を満たせば60%となります。
(中小企業以外は、それぞれ30%、45%です。)
このように、結構まとまった金額の助成を受けることができます。
ただ、支給限度額がもちろんあります。
例えば、OFF-JTの賃金助成の場合、1人1訓練あたり1,200時間です。
その他、助成コースによって、定められているので確認してください。
そして、1事業所での1年間の助成額の上限は1,000万円で、一般訓練コースのみが500万円です。
ここに出てくる生産性要件というのは、この助成金は事業所における生産性向上の取り組みを支援するという目的があるので、所定の生産性要件を達成した場合に助成金の割増等があります。
その計算方法は厚生労働省が公開しているパンフレットにも掲載されているので、それに従って算出します。
5.手続きの流れ
(1)特定訓練コース・一般訓練コース
①都道府県労働局へ訓練計画の提出
自社による訓練計画を作成し、訓練開始日から1カ月前までに、各都道府県労働局へ提出します。
その際、雇用保険適用事業所単位での手続きとなるので注意してください。
また、提出した計画内容に変更がある場合は変更届を提出します。
②訓練の実施
内部・外部講師によって行われる訓練、教育訓練施設で実施される訓練等
③都道府県労働局へ支給申請書の提出
訓練終了日の翌日から2カ月以内に労働局に必要な書類を提出します。
④助成金の受給
支給審査を経て、支給・不支給が決定されます。
(2)特定訓練コース(雇用型訓練)
基本的な流れは上記の特定訓練コース・一般訓練コースと同様ですが、特定分野認定実習併用職業訓練及び認定実習併用職業訓練の場合は、その前に実施計画の大臣認定が必要になります。
中高年齢者雇用型訓練は、特定訓練コース・一般訓練コースと流れは同じです。
特定訓練コースはジョブ・カードという生涯を通じたキャリア・プランニングのツール、そして、職業能力証明のツールとして活用されるシートを使用します。
(3)特別育成訓練コース
基本的な流れは同じです1カ月前までに計画書を実施し、訓練を実施したら、訓練終了から2カ月以内に支給申請をします。
有期実習型訓練の場合は、キャリアコンサルティングの実施も含まれ、ジョブ・カードを作成します。
6.人材開発支援助成金の利用上の注意
この助成制度には、かなり多くの訓練コースが用意されており、複数の助成メニューに該当する場合がありますが、いずれか1つを選択して申請します。
助成要件や限度額といった条件が異なるので、しっかり比較して利用します。
制度の仕組み、条件はしっかりと確認してください。
申請できる企業、条件、非常に細かく規定されています。
そこに違反すると不正受給とみなされる恐れもあります。
また、外部の専門家に手続きの支援をしてもらうにしても、過去に不正受給に関わったことのある専門家に依頼してしまわないようにしなくてはなりません。
まとめ
厚生労働省のこの人材開発支援助成金は、当然、審査もありますが、要件を満たしていれば申請すればもらえるお金になります。
会社の発展のためには、人材育成は欠かせませんから、行われているものです。
この助成制度を活用していくことで、よりスキルアップにつながる教育を行いやすくなります。
書類作成や手続きの手間はありますが、検討してみられてはいかがでしょうか。
この助成制度は、本年度、平成31年4月1日での改正に加え、令和元年8月21日からの改正もありました。
細かく制度が見直されておりますので、常に厚生労働省のWEBサイトを確認し、改正状況を確認するようにしましょう。