職業訓練の助成金、人材開発支援助成金を活用しよう!
厚生労働省の助成金のうち、非正規雇用の従業員に対して職業訓練を実施することで対象となるものがあります。
それは、従業員のキャリアアップを図り、会社の生産性向上につなげる人材開発支援助成金「特別育成訓練コース」です。
条件にあてはまれば、申請して資金調達できる助成金ですから、上手に活用していきましょう。
1.人材開発支援助成金「特別育成訓練コース」とは
人材開発支援助成金「特別育成訓練コース」は、平成30年にキャリアアップ助成金の人材育成コースが統廃合されてできた制度です。
人材開発支援助成金は、労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を効果的に促進するため、事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。
この助成金を受給できない事業主も定められています。
それは労働保険料を支払っていない、過去1年間に労働関係法令の違反を行っている、雇用保険適用事業所の事業主でない等といったものがあります。
不正受給が発覚すると違約金の請求もあります。
対象となるのは中小企業事業主で、業種により範囲が異なります。
例えば、サービス業であれば資本金5,000万円以下、または常時雇用する労働者数が100人以下です。
2.助成金の支給額
1訓練コースにつき、以下の額となります。

1年度1事業所あたりの支給限度額は1,000万円となっています。
3.生産性要件とは
起業における生産性向上の取り組みを支援するために、生産性を向上させた場合、助成額または助成率が割増されます。
生産性は次の式で計算します。
生産性=付加価値÷雇用保険者被保険者数
訓練開始日が属する会計年度の前年度の生産性とその3年度後の会計年度の生産性を比べて6%以上伸びていることが生産性要件となっています。
この生産性要件については、改めて書類を提出して申請します。
4.対象となる訓練は?
対象となるのは、有期契約労働者にたいして、正規雇用労働者等に転換、または処遇を改善するもので、次の3つに分類されます。
➀ 一般職業訓練(Off-JT ※育児休業中訓練、中長期的キャリア形成訓練を含む)
➁ 有期実習型訓練(ジョブ・カードを活用したOff-JTとOJTを組み合わせた3~6か月の職業訓練)
③ 中小企業等担い手育成訓練(業界団体を活用した、Off-JTとOJTを組み合わせた最大3年の職業訓練)
それぞれについて概要を見ていきましょう。
①一般職業訓練
○ Off-JTであって、次の(1)から(4)のすべてに該当する職業訓練
(1) 1コース当たり1年以内の実施期間であること
(2) 1コース当たり20時間以上の訓練時間数であること
(3) 通信制のみの職業訓練の場合は、一般教育訓練・特定一般教育訓練の指定講座であること
(4) 次の1~3のいずれかに該当する訓練であること
1,訓練実施事業主以外が設置する施設に依頼して行われる訓練(講師の派遣も含む)であり、施設に委託して行う事業外訓練または事業内訓練
2.都道府県知事から認定を受けた認定職業訓練
3.1及び2以外の事業内訓練であって、専修学校専門課程教員、職業訓練指導員免許取得者もしくは1級の技能検定に合格した者またはこれらと同等以上の能力を有する者により実施される職業訓練
②有期実習型訓練
○ 正社員経験が少ない有期契約労働者等を対象に、正規雇用労働者等への転換を目指す「➀一般職業訓練」(4)に規定するOff-JTと適格な指導者の指導の下で行うOJTを組み合わせて実施する職業訓練(管轄労働局長が訓練基準に適合する旨の確認を行った職業訓練)
【主な訓練基準】(訓練基準に適合する訓練カリキュラムを作成する必要があります
• 企業でのOJTと教育訓練機関などで行われるOff-JTを効果的に組み合わせて実施する訓練であること
• 実施期間が3か月以上6か月以下であること
• 総訓練時間が6か月当たりの時間数に換算して425時間以上であること
• 総訓練時間に占めるOJTの割合が1割以上9割以下であること
• 訓練修了後にジョブ・カード様式3-3-1-1:企業実習・OJT用により職業能力の評価を実施すること
③中小企業等担い手育成訓練
○正社員経験が少ない有期契約労働者等を対象に、製造業または建設業等の分野において、専門的な知識及び技能を有する支援団体と事業主とが共同して作成する訓練実施計画に基づき、正規雇用労働者等への転換を目指すOff-JTと適格な指導者の指導の下で行うOJTを組み合わせて実施する職業訓練(厚生労働省が指定する業界団体と共同作成し、管轄労働局長が訓練基準に適合する旨の確認を行った職業訓練)
【主な訓練基準】(訓練基準に適合する訓練カリキュラムを作成する必要があります)
• 企業でのOJTと支援団体で行われるOff-JTを効果的に組み合わせて実施する訓練であること
• 実施期間が3年以下であること
• 総訓練時間に占めるOJTの割合が1割以上9割以下であること
• 職業訓練を受ける有期契約労働者等に対して、適正な能力評価を実施すること
• 職業訓練の指導及び能力評価に係る担当者及び責任者が選任されていること
• 職業訓練を修了した有期契約労働者等の労働契約の更新等の取扱い及び当該取扱いに係る基準が定められていること
4.手続きの流れ
手続きの流れは、それぞれのコースによって異なりますので、詳しくは厚生労働省の公開している資料を参照してください。
基本的には、対象の訓練を行う前に訓練計画書を作成し、事前に提出することになっています。
訓練開始日から1カ月前までに計画書を提出し、訓練が終了したら2カ月以内に支給申請書を提出します。
提出するのは、管轄労働局になります。
期限内に提出されなければ、助成金は支給されないので、注意が必要です。
訓練計画届の家訓を受けた後に、訓練内容などに変更が生じたら、訓練実施日、もしくは変更後の訓練実施日の前日までに変更に関する書類を提出しなければないことになっています。
とはいっても、もちろん、ケガ、病気、天災など、事前に予測できないような事態が発生した場合は、変更後の訓練実施後7日以内に提出することができます。
また、この助成金は、所定労働時間外に実施した訓練の場合は、賃金助成・実施助成の助成対象外ですし、計画時間数を超えて実施した分も助成対象外ですので注意が必要です。
その他、細かい要件や、書式の記入方法等が記載されたパンフレットやガイドラインが、厚生労働省のWebサイトにあるので、確認してください。
まとめ
今回は、厚生労働省の人材開発支援助成金の特別育成訓練コースの概要を見てきました。
1,000万円と限度額が大きいですし、いずれにしても何かしらの従業員教育は行っているものです。
同じ訓練を行うのであれば、こうした助成金を上手に活用して、授業員のレベルアップ、会社の生産性向上を図り、同時に資金調達まで視野に入れてはいかがでしょうか。
こうした助成金制度は頻繁に見直しが行われていますので、最新情報を確認して上手に利用していきましょう。